人工股関節全置換術が必要になる疾患として、変形性股関節症、特発性大腿骨頭壊死、関節リウマチが挙げられます。いずれの疾患でも、強い股関節の痛み、関節が壊れることによって生じる下肢の長さの違い、および股関節の動きが悪くなることによって、歩行しにくくなり、日常生活に大きな障害が生じます。人工股関節全置換術は股関節の痛みを解消して、歩行することや日常生活の質を大きく改善させることができる画期的な治療法です。人工股関節全置換術には、すでに60年以上の歴史があり、日本国内でも年間8万例弱の手術が行われています。現在使われている人工股関節は素材が改良され、人工股関節の耐用年数も非常に長くなっています。当院では手術方法にも様々な改良を加えてきました。股関節周囲の筋肉と腱の損傷をより少なくすることで、術後の脱臼の危険を極めて低くして、ほとんどの方に術後の動作制限を行っていません。2023年からは人工関節をより正確に設置するために、簡易ナビゲーションシステムを導入しました。
人工股関節術後のリハビリテーションの経験が豊富な理学療法士がリハビリテーションを行います。術翌日から歩行器などを使ってベッドから離れて、歩行訓練を進めていきます。1本杖で歩行でき、ご自宅で生活できる状態を目指してリハビリテーションを行います。おおよそ2週間で多くの方がご自宅に退院されます。お元気になられてからは歩行距離の制限はありません。楽しみとしてのスポーツ(ハイキング、テニス、ゴルフ、水泳など)や、我慢されていた旅行を再開される方もたくさんいます。
変形性膝関節症は疼痛が生じ、可動域が悪くなることで、日常生活に大きな障害が生じる疾患です。様々な保存療法(薬物療法、理学療法、関節内注射)で改善できない変形性膝関節症に対しては手術療法が必要になります。年齢、膝関節の機能と疼痛の程度、生活スタイルなどの要素を考慮しますが、膝の痛みで日常生活がどれくらい不便になっているかが、手術を行う判断として最も重要です。変形性膝関節症の手術には自分の関節を温存する手術(骨切り術)と膝を人工の関節に入れ替える人工膝関節全置換術と人工膝関節単顆置換術があります。この2つの人工関節手術を合わせると日本国内で9万例以上の手術が行われています。人工膝関節置換術で膝関節の痛みが解消され、がに股(内反)変形や伸展障害が改善されるので歩きやすくなります。人工膝関節の構造上、正座をすることは難しいことが多いです。人工膝関節手術の際に、高精度の術中ナビゲーション装置や、ロボット手術支援システムを導入して、より小さな侵襲で人工関節を正確に設置する手術を行っています。
人工膝関節術後リハビリテーションの経験豊富な理学療法士が行います。術翌日には歩行器などを使ってベッドから離れて、歩行訓練を進めていきます。人工膝関節置換術では可動域を改善させることが大切ですので、術後早期からCPM装置(自動的他動運動装置)を併用して、膝関節の曲がりを改善させる訓練を始めます。可動域が少しでも大きくなった(よく曲がる)方が日常生活で過ごしやすくなります。1本杖で歩行でき、ご自宅で生活できる状態を目指してリハビリテーションを行います。おおよそ2週間で多くの方がご自宅に退院されます。お元気になられてからは歩行距離の制限はありません。楽しみとしてのスポーツ(ウォーキング、ハイキング、水泳など)や、我慢されていた旅行を再開される方も少なくありません。ただし、膝に大きな負荷がかかるスポーツに関しては始める際に担当医にご確認下さい。